2020.9.16 07:30

【五輪を語る 尚美学園大学教授・佐野慎輔】大坂なおみの“贈りもの” IOCは今こそ人種差別と真剣に向き合うとき

【五輪を語る 尚美学園大学教授・佐野慎輔】

大坂なおみの“贈りもの” IOCは今こそ人種差別と真剣に向き合うとき

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五輪を語る 尚美学園大学教授・佐野慎輔
大坂は準々決勝後、黒人男性暴行死事件の被害者、ジョージ・フロイドさんの名前が入ったマスクを着けてインタビューに応じた(ゲッティ=共同)

大坂は準々決勝後、黒人男性暴行死事件の被害者、ジョージ・フロイドさんの名前が入ったマスクを着けてインタビューに応じた(ゲッティ=共同)【拡大】

 重く心に残る。テニスの全米オープンを2年ぶりに制した大坂なおみの優勝インタビュー。人種差別撤廃を訴え、警察官の暴行、発砲で亡くなった黒人被害者の名前を入れた黒いマスクを着用した理由を問われ、逆にこう問いかけている。

 「あなたが受け取ったメッセージは何でしたか?」

 マスクは「会話を始めることが目的」であり、「より多くの人がこのことを語る(きっかけになれば)といいと思う」と述べた。ハイチ系米国人を父に持つ大坂の心の内を、軽々に「わかる」とは言えない。ただ、この根深い問題を語ることは私にもできるだろう。

 4年前、プロフットボールのNFLでコリン・キャパニックが相次ぐ黒人差別に抗議、試合前の国歌斉唱で片膝をつくポーズをとった。この静かな抗議は米国のアスリートたちに広がり、いまや反人種差別の象徴となっている。そしてNFLをはじめ、バスケットボールのNBA、野球のMLBと組織も選手たちを擁護する。全米オープンを主催する全米テニス協会もまた、政治的なプロパガンダ禁止の戒を破り、大坂のマスク着用を容認した。

 多人種、多国籍が当然の米プロスポーツの世界だからかもしれない。しかし、オリンピックやパラリンピックも例外ではあり得まい。1968年メキシコ市大会の「ブラックパワー・ソリュート」は2020年東京大会でも起こりうる。

 そのとき、国際オリンピック委員会(IOC)はいかに対処するのか。人種、宗教、政治、性別などの平等を憲章でうたう一方、片膝つきポーズを政治的プロパガンダと禁止、排除する。今こそ、真剣に向き合うときである。