2019.9.10 13:00

【球界ここだけの話(1736)】順位逆転の危機を救ったソフトバンク・本多コーチのファインプレー

【球界ここだけの話(1736)】

順位逆転の危機を救ったソフトバンク・本多コーチのファインプレー

特集:
サンスポ記者の球界ここだけの話
ソフトバンク・本多コーチ

ソフトバンク・本多コーチ【拡大】

 あの一戦を落としていたら…。ソフトバンクの関係者が、そう考える日がくるだろう。1日の西武戦(メットライフ)。連敗でゲーム差なしに迫られ、順位逆転の危機で踏みとどまった試合。絶体絶命の場面も迎えた。3点リードの八回、安定感抜群のリバン・モイネロ投手が3連打で1点を失った。なおも無死二、三塁で、好調の中村剛也内野手が打席に入った。

 外野の守備は深い。同点は覚悟という形。二塁手も定位置でバックホームの選択肢は捨てた。ところが、遊撃手は前進。広いグラウンドで唯一の網に白球はかかった。中村は緩い打球の遊ゴロ。三走は本塁に突入できなかった。工藤公康監督は「本多コーチのファインプレー」とたたえ、進言した本多雄一内野守備走塁コーチは興奮が残る口調で解説した。

 「しびれました。直感というか。モイネロの球と前の打席までの中村さんの打撃内容を考えて、強い打球は右方向。あっち(三遊間)はああいう打球かなと思って」

 イレギュラーなシフトを「直感」と振り返った。その表現しかなかっただろう。だが、それだけだろうか。ヤフオクドームの日常の光景が思い浮かぶ。ホームチームは先に練習を終え、ビジターの練習中に食事などを済ませる。静かになったベンチに、ひとあし早く戻って打撃練習を眺める本多コーチの姿がある。

 「データももらうけど、その日の打者の傾向というのもあるから見ておきたくて」

 最近の野球にスコアラーを中心とした優秀な分析は欠かせない。加えて、常に磨く観察眼。実際に本多コーチは「前の打席までの中村さんの打撃を考えて」と語った。数十秒で判断を下した「直感」。決して、ひと言では片づけられない。

 話を試合に戻す。さらに2死二、三塁で、外崎修汰内野手の中前に抜けようというライナーを二塁手の牧原大成内野手が横っ飛び。数十センチの攻防も、あらかじめ二遊間よりに守っていた鷹のシフトが勝った。選手や首脳陣から「準備」という言葉は頻出するが、143試合の長丁場で何度も役に立つわけではない準備も多々。それが、あの場面で-。激しい優勝争いの中で忘れられない1イニングだ。(安藤理)